咬合調整
ほとんどの方は、歯の治療中、歯の咬み合わせを調べるために、赤色や青色の紙を『カチカチ咬んでください・・・』と言われ、『カチカチ』咬んだことがあると思います。
この『カチカチ』は、ただ咬むだけでなく、咬み合わせの高さを数ミクロン単位で調整するために、色の付いた紙でその位置を確認する作業をしています。
調整する場所が決まったら、ただ強く当たっている場所を削るのではなく、普段どおり咬んだり(交合位)、横にギシギシしたり(側方位)、前にギシギシしたり(前方位)、色々な方向からバランスを見ながら調整をします。
例えば、右側奥歯にかぶせ物が入ったとします。当たり前のことですが、かぶせ物が入る前と入った後で、咬み合わせは同じでなければなりません。この時、『カチカチ』咬んでもらい、咬み合わせを調整するわけですが、咬み合わせが高い時は高いとわかりますが、少し低いぐらいの時は、なかなかその歯だけが低いと感じにくくわからないと思います。
左右のバランス調整
咬み合わせを調べる場合、かぶせ物が入る側だけを調べるのではなく、かぶせ物が入った後、反対側も入る前と同じように咬んでいるかを調べなければなりません。さらに、前歯も同じように咬んでいるかを調べる必要があります。
このようにして奥歯にかぶせ物が入っただけでもお口全体を調べるのは、咬み合わせのバランスが変わってしまうからです。
昔は、かぶせ物が入った後、あまり咬み合わせの調整はせず、『時間が経つと慣れるから・・・』と言われ、患者さんも『違和感はあるけど慣れてくるかな・・・』くらいでしか思っていなかったのではないでしょうか。かぶせ物が入り、咬み合わせが高いと感じていたが、しばらくして咬みやすくなったと思った時は、左右どちらかに咬み合わせはずれています。
また咬み合わせが低い場合、低いのであまり感じないことがかえって問題になってきます。この場合も左右どちらかに咬み合わせはずれています。症状として現れなくても、時間が経つにつれて色々な場所に現れてきます。
逆にこれまでずれていた咬み合わせが、かぶせ物が入ることで正常の状態になり、咬み合わせのバランスが良くなることもあります。
また、治療中は咬み合わせが変わらないようにするために、かぶせ物が入るまでは、その場所に仮歯が入ります。この仮歯のおかげで、次回、かぶせ物が入るまで、咬み合わせがずれないようになっています。
また、仮歯は素材が樹脂でできていてるため、金属に比べ軟らかく、かぶせ物が入り咬み合わせの調整をした後でも、軟らかいものから硬いもの(金属)に変わるので、高く感じやすい場合もあります。このような場合は、長期間置かず、2・3日食事をしてみて、かぶせ物が入った場所が反対側よりも先にあたるような感じが続いていれば、再度咬み合わせの調整が必要です。
咬み合わせは、決して『慣れてくる』ことはありません。
入れ歯の咬合調整
入れ歯については、総入れ歯の場合、咬み合わせが合っていないと食事ができません。当然、入れ歯は落ちやすく、部分的に強く当たる場所ができて痛くて咬めず、話もしづらく、飲み込みにくくなります。
特に総入れ歯の場合は、咬み合わせが大切になります。 部分入れ歯の場合は、残っている歯があるので、咬み合わせの調整はしやすくなりますが、残っている歯に引っかけがくるため、歯肉が痩せてくると引っかけがくる歯に負担がかかり
やすくなるので、入れ歯の内側が痩せてきていないか必ず定期的なチェックが必要です。
かぶせ物・入れ歯いずれにしても、咬み合わせのバランスが大切です。