昔からカキを食べてあたった(食あたり)という話を聞くことがあると思いますが、何が原因でこのような症状が起きるのでしょうか?カキとノロウイルスは、何か関係があるのでしょうか?
実は海産物の中でもカキを含む二枚貝の中にノロウイルスが見つかることが多いそうです。
調査の結果、海水1ℓ中にノロウイルス1個(最大)が漂っていて、カキのような二枚貝は、元々海水の汚れを取り込んで浄化してくれる(ろ過する)能力があり、このためにノロウイルスも一緒に取り込んで濃縮していたのです。皮肉なことに、ろ過する能力が高いカキほどノロウイルスが多く存在することになるのです。
そもそも海水中のノロウイルスはどこから来たのでしょうか?そのルートを探ると河川にたどり着き、河川のノロウイルスを調査した結果、川の水1ℓ中に1000個(最大)存在し、さらに川のノロウイルスのルートを探ると下水処理場にたどり着き、下水の1ℓ中には約10万個のノロウイルスが検出され、海水や河川に比べ桁違いに高い濃度であることが分かってきました。
ノロウイルスは、人間の腸管の中で増殖します。人間から出たノロウイルスは下水へ流されていき、下水処理場で濃縮し、その水が河川へ流れ、そして海へと流れて二枚貝がそれを吸い込んで濃縮し、またその貝を人間が食べて腸の中で増殖していくという悪循環によりノロウイルスは生き続け進化している訳です。このことからノロウイルスを増やしている犯人は人間であり、これまで悪者扱いされてきたカキは、どちらかといえば被害者なのです。
下水処理場が整備されているような先進国においては、感染症は減少していきますが、ノロウイルスだけは例外のようです。
つまり、衛生環境が整っているほど下水処理場が増え、ノロウイルスを増殖させているからです。徐々に原因が解明され、生きた人間の腸以外で増殖することができないノロウイルスは、実験・研究ができないため薬やワクチンを作ることができません。
そのため下水処理場でノロウイルスを処理できるように研究が行われています。ある研究者によると、普通、細菌の表面には脂質の膜(細胞膜)があり、アルコールなどを使うと溶けてしまうため感染できなくなりますが、ウイルス(ノロウイルス)は、脂質の膜がないため、一般的な消毒では効果がありません。特にノロウイルスはその特性が強いため、トイレからの水を環境中に出す前にノロウイルスの濃度を下げることが重要になってきます。そこで発見されたのが腸内細菌SENG-6で、この腸内細菌はノロウイルスだけを見つけて吸着し回収する機能を持っています。この細菌があれば効果的にノロウイルスを減らすことができると考えられ、現在研究が続けられています。
◎家庭でノロウイルスを防ぐ方法
柿渋による消毒 | 柿にふくまれるタイニンという成分が、ウイルスのタンパク質に対応してガッチリ固め感染できないようにします。 |
柿渋の作り方 | ホームセンターなどで柿渋(無臭)を購入し、消毒アルコールで10倍に薄める。 |
柿渋の使い方 | 霧吹きの容器に入れ、手指や身の回りのものに吹きかける。 |
ペリウォーター(次亜塩素酸) | 当院のペリウォーター(うがい薬)を希釈し、霧吹きの容器に入れ、柿渋と同時に手指や身の回りに吹きかけたり、汚れている場所の消毒としても効果的です。 |
手洗い | 15秒以上(ウイルスを殺菌することはできないが、手についたノロウイルスを洗い流すことができる)トイレの後、食事の前に必ず手洗いを行う。 |
トイレの消毒 | ○トイレ内の手で触る場所はすべて十分な消毒を行う。 |
カキの食べ方 | 生食用のカキよりも、加熱が不十分な調理のもの(半生状態)が感染しやすくなります。気になる方は、カキの中心部を85℃~90℃になってから90秒加熱することでカキにいるノロウイルスが死滅するため安全に召し上がることができます。 ○生で食べる場合・・・生食用を選ぶ。 |
*今回は、前回(2016年2月公開分)に引き続き、ノロウイルスの特集記事となっています。