歯周病は、虫歯と並んで口腔の二大疾患と言われていますが、最近ではメタボリックシンドロームのような生活習慣病だけでなく、早期低体重児の出産、心臓血管系疾患、誤嚥性肺炎の誘因となる研究が、以前よりも数多く発表されているように、お口だけでなく全身へ影響を及ぼす病気になってきています。
歯周病は、国民の約20%が感染し、推定患者数は6000万人以上、15歳以上の有病者率は74%以上で、患者数は8000万人以上にもなると言われています。
これまで歯周病の原因菌の一つである歯周病菌(ジンジバリス菌)は、歯周炎組織を介した菌血症、局所でつくられた炎症サイトカインによって引き起こされた全身のごくわずかな炎症の影響により、メタボリックシンドローム関連疾患のリスクになると言われてきました。最近の新たな研究では、ジンジバリス菌が腸内細菌叢を大きく変化させ全身的な炎症を引き起こすことも解ってきました。
また、腸内細菌叢の変化が同様にメタボリックシンドローム関連疾患の発症や、進行に関わっていることも解ってきたことから、歯周病と腸内細菌との結びつきについても明らかになったと言えます。
歯周病は、歯周病菌による感染症です。歯周病菌は、口の中が不潔な状態のままでコントロールされていない場合増殖し続けます。
歯周病菌は口の中で増殖した後、大量な数が唾液や食べ物と一緒にくっ付いて胃に入り、生きたまま胃を通過し、腸管内に到達すると腸管の上皮細胞同士を結び付けているタイトジャンクションと呼ばれている部分に障害を生じさせ、この結果、腸内細胞を産生する毒素(エンドトキシン)が体内に入り込み、血中の毒素レベルが上昇することで血流を介して体内に流入し、全身に軽微な炎症を引き起こし続けます。これらの理由から、歯周病と全身疾患が関係していることが解ります。
さらに、歯周病菌が体内に入ると、大腸および小腸のリンパ球が増殖し、腸内細菌叢が変化するため、腸管での免疫応答に影響が及ぼされ、全身的な炎症を引き起こしやすくなることも解っています。
高齢化社会になり、特に免疫力が低下してきている高齢者においては、口の中が不潔な状態のままでいると、歯周病菌を含む唾液や歯周病菌が付着した食べ物を一緒に飲み込むことが多くなり、体への影響が出てくる可能性が高いため、早めの予防対策を行い、日頃から注意していく必要があります。
予防としては、生活環境や生活習慣、予防のタイミングを考えた毎日のブラッシング、定期検診でのクリーニング(予防のためのプラークコントロール)を行うと共に適切な歯科治療を行うことが大切です。
最近では、加齢と共に減少するビフィズス菌などの有用菌を積極的に摂取し、腸内環境を日々整えることで、より治療効果が高まるのではないかと考えられます。