医療法人デンタルクリニックたかはし





コレステロール値の新常識

 毎年多くの方が、自分の健康状態を知るために健康診断を受けていると思いますが、その
中でも気になるのがコレステロールの値ではないでしょうか?
 一般的にHDL(高比重リポタンパク)は善玉コレステロール、LDL(低比重リポタンパク)は悪玉コレステロールと呼ばれ、それらの数値の高低で判断されていました。
 最近では、LH比(LDLコレステロール値÷HDLコレステロール値:1.5以下は正常、2.5以上は危険)の項目が増えたことで、脂質異常症(高脂血症)を以前よりも診断しやすくなりました。
 また、LDLコレステロール値が高いと血液がドロドロになって動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞になる可能性が高くなると言われていますが、健康診断の結果でLDLコレステロール値が正常(A判定)であっても心筋梗塞になる方が多くいることが分かってきました。なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか?
 そもそもコレステロールは、細胞内に存在し、細胞周囲の細胞膜を作る材料になるため細胞自体が大切に持っています。しかし、次第に古くなって劣化していくと肝臓からそれらを回収するためにHDLがやってきます。そして、その代りになる新鮮なコレステロールを血液の流れにのってLDLが届けてくれます。
 しかし、食生活の乱れなどによりLDLがその機能を果たせなくなるとしっかり細胞へ届けることができなくなり、血管内に劣化したコレステロールを残したまま行き場を失い、血液中に留まることになります。
 通常は白血球の一種であるマクロファージが残っているコレステロールを見つけると食べて掃除をしてくれるので血管内がきれいになります。一般的にこの流れがうまくいかなくなり始めるとLDLは必要な存在であっても悪玉と呼ばれ、LDLコレステロールを増やさない方が良いと言われています。
 ここで、総コレステロールとはHDLコレステロールとLDLコレステロールを合わせたものを言いますが、検査結果を見ていただくと、二つを合わせても総コレステロールと同じ数値にならず差が生じます。その差にはHDLでもLDLでもないコレステロール、『レムナントコレステロール』が隠れています。レムナントとは、『残りもの』という意味で、マクロファージはコレステロールの中でもこのレムナントが大好物でどんどん食べていき、食べ過ぎると死んでしまいます。その死骸が血管の壁を持ち上げて血管内にプラークとなって残り、その結果、血管内に動脈硬化というこぶ状のとても危険な状態になります。つまり、このレムナントこそが極悪玉コレステロールという訳です。そこで、LDL(悪玉)とレムナント(極悪玉)を総悪玉とすると、この総悪玉が問題になってくることが分かってきます。この総悪玉コレステロールは『non-HDLコレステロール』と呼ばれ、『150以上:やや危険・170以上:危険』という基準値があります。
 健康診断結果に総コレステロール値が書いていない場合は、LDLコレステロール+30で総悪玉コレステロールのおおよその目安になります(non-HDLコレステロール=総コレステロール- HDLコレステロール)。
 現在、HDLコレステロール値の判定により、これまで判定してきたLDLコレステロール値よりも動脈硬化性疾患の発症予測が優れ、早期発見に繋がっていることも分かってきました。つまり、健康診断結果が全て正常(A判定)であっても心筋梗塞になった方は、non-HDLコレステロール値を調べると基準値を超えていたのです。
 また、non-HDLコレステロール値は、肥満気味の人、中性脂肪が高い人、糖尿病の人は数値が上がる傾向にあるので、それらを見つけるのにも役に立つ数値と考えられ、徐々にではありますが健康診断の項目に入ってきています。
 食生活において、食べ過ぎはnon-HDLコレステロールを増加させる大きな原因でもありますので、脂っこい食事を好む方は、カロリーを抑えバランスの取れた和食(おふくろの味)のようなメニューを取り入れたり、お肉が中心になる方は、お肉に含まれる飽和脂肪酸を控えるためにもEPAが多く含まれる魚(サバ・イワシなどの青魚)を取り入れることをお勧めします。もちろん食事時間を短縮せず、ゆっくり味わってよく噛むことが大切です。そして、毎日少しでも体を動かし適正な体重を維持することでレムナントコレステロールの数値を下げることができることも分かってきていますので、年齢を問わず『毎日の食事と運動』に気をつけ、継続していくことが健康寿命を延ばすことへと繋がっていくと考えられます。

平成30年1月5日更新

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